今回は最近noteや動画でよく話している「実効還元力」について、ケミカル目線で解説していこうと思います。
「検索しても出てこない」と言われることが多いので、ブログでも一度まとめておきます。
※パーマ塾が薬剤を判断するために使っている考え方(造語)なので、学術用語ではありません。
※YouTubeの自動字幕では「実行還元力」と誤変換されることがありますが、同じものです。
・スペック表と体感のズレを理屈で説明できる
・「pH以外ほぼ同じ薬剤」を同じ薬だと思わなくなる
・放置タイムを薬剤の個性から考えられる
【1】実効還元力とは?
結論からお伝えすると、実効還元力とは
スペック表の数値ではなく、実際に髪の中でどれだけ還元が進むか
のことです。
縮毛矯正・パーマの薬剤スペックといえば、
- pH
- アルカリ度
- 還元剤濃度(TG換算◯%)
このあたりを軸に薬剤の強さを判断している方が多いと思います。
僕も昔はそうでした。
ただ、サロンワークで薬剤を使い込んでいくと、
「スペックはほぼ同じなのに、効き方が全然違う」
という薬剤に必ず出会います。
- TG7%表記なのに、体感はもっと優しい薬剤
- pHが低いのに、置いたら思った以上に効いてくる薬剤
この「表記と体感のズレ」を説明するために使っているのが実効還元力です。
カタログ上の強さ(表記スペック)と、髪の中で実際に起こる還元(実効還元力)は別物
ここを押さえておくだけでも薬剤選定はかなり変わると思います。
【2】なぜスペック表だけでは分からないのか
理由をざっくり言うと、還元剤は
「入っている量」ではなく「働ける状態になっている量」
で効くからです。

還元剤がSS結合(シスチン結合)を切る時に実際に働いているのは、
チオラート(-S⁻)
という状態になった還元剤です。
そして、どれだけチオラートになれるかは、
- 還元剤の種類(それぞれ得意なpHが違う)
- 薬剤のpH
- 塗布後のpHの動き方(処理剤・バッファ設計)
- 髪側の状態
このあたりの要因で変わります。
なので同じ「TG換算7%」でも、中身の還元剤とpH設計が違えば髪の中で働いている量は別物になります。
ここが実効還元力の本体です。
※「チオラートがどれだけ出るか」はpKaという数値で整理できるのですが、深くなるので今回は割愛します。
還元剤の種類がわからない方は、»【これだけ読めばいい】パーマ還元剤の種類/特性まとめみてね!

【3】具体例:クオライン130と110
一番わかりやすい例がクオラインの130と110です。
スペック表だけ見ると、
スペック比較
- 130:pH7.7 還元剤濃度7%
- 110:pH6.0 還元剤濃度7%
「pH以外ほぼ一緒じゃん」
と思われがちですが、サロンワークでの体感はかなり違います。

130の個性
塗布後にpHが徐々に下がっていく(と思われる)設計です。
初動から過剰に効きにくく、扱いやすい。
体感としての実効還元力は、表記のpH7.7ほど強くない印象です。
110の個性
pHがあまり変動せず、安定して推移する(と思われる)設計です。
なので長く置くと還元がずっと進み続けます。
スペック表では130の方が強く見えるのに、
使い方によっては110の方が強く出る。
これが「実効還元力はスペック表では分からない」ということです。
「130より弱い」と思って同じ感覚で長時間放置すると、事故りやすいのは110の方です。
※あくまでも僕のサロンワークでの体感と推測を含む内容なので、参考程度にお願いします。
130と110の比較についてはこちらの記事でも書いています↓
【4】実効還元力で考えると何が変わるのか
この考え方を持っておくと、サロンワークでこのあたりが変わります。

- 新しい薬剤の「体感とのズレ」に説明がつく
- 放置タイムの根拠が変わる
- スペックが似ている薬剤を「同じ薬」と思わなくなる
「TG◯%のわりに優しい」「pHのわりに効く」を、感覚ではなく理屈で整理できます。
pHが下がっていく薬剤と、安定して効き続ける薬剤では置いていい時間が違います。
導入の判断や、代用レシピを組むときの精度も上がります。
逆に実効還元力を知らないままだと、
スペック表の数値だけを信じて、体感と合わない薬剤選定を続けてしまう
ことになります。
【5】よくある質問
Q.実効還元力は数値で測れる?
メーカーのスペック表には載っていません。
還元剤の種類・pH・pHの経時変化・髪の状態から推測して、最後は毛束や軟化チェックで確かめるのが現実的だと思います。
Q.「実行還元力」と「実効還元力」どっちが正しい?
「実効還元力」です。
YouTubeの自動字幕で「実行還元力」と誤変換されることがあります。
Q.総還元力・還元値とは違うの?
総還元力(還元値・TG換算)は「入っている還元剤の量」を表す表記スペックです。
実効還元力は「そのうち実際に働く分」の話なので別の概念です。
【6】まとめ
- 実効還元力=実際に髪の中でどれだけ還元が進むか
- 還元剤は「入っている量」ではなく「チオラートになれた量」で効く
- スペック表が同じでも、還元剤の種類とpH設計で効き方は別物になる
- 130と110のように「pH以外ほぼ同じ」薬剤ほど注意
薬剤選定で失敗しないためには、スペック表を覚えることよりも
「この薬剤は髪の中でどう動くのか」
を想像できるようになることが大事だと思っています。
必要以上に強い薬剤を使えばクセはだいたい伸びますが、その分髪の毛が無駄に痛んでしまいます。
大切なお客様に喜んでもらうための勉強のきっかけになれば嬉しいです!
さらにここから一歩踏み込んで勉強されたい方はこちらをご覧いただくといいと思います。
実効還元力の中身(pKaとチオラートの計算・pHの経時挙動の読み方・薬剤設計への落とし込み)は森式第1弾のnoteで体系的に解説しています⬇︎
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