【語られない】酸性ストレートの危険性/失敗を徹底解説(メリットとデメリットの整理)

かなりお久しぶりの投稿になりますが5000文字を超える力作となっておりますので興味のある方は最後までご覧いただけたらと思います。

今回酸性ストレートをこれから始めたい方に向けてパーマ塾式にまとめてケミカルが苦手な方でもわかりやすく解説していきます。

美容室のケミカルは多角的な面も大きく絶対的な正解はないので、考え方によっては矛盾する部分もあるかもしれませんが全てを真に受けるというよりは参考にしてもらいあとは自分の手で確かめてください。

近年は酸性ストレートにブームは明確です。

美容師をしていれば名前くらいは聞いたことがあるのではないでしょうか?

アルカリを無駄に使わず、最小限のダメージで施術ができるので痛みにくい!

というテーマで一気に普及しています。

一方で簡単な施術ではないので、失敗の事例も多く出ていると新美容出版の編集さんからもお話をいただきました。

酸性ストレートを巧みに使いこなされている方はたくさんいらっしゃいますが、施術方法は高レベルで再現するのはなかなか難しいです。

今回は

・これから酸性ストレートをはじめたい

・導入をしてるけどイマイチ使いこなせない

・実際に酸性ストレートに失敗してしまった

こんな方に参考になるように解説してきます。

あくまでも酸性ストレートのはじめの一歩としての考え方を理解して失敗を避けることにフォーカスした内容にまとめていきます。

すでに酸性ストレートをマスターされている方にもある程度おさらいになるかと思うので、楽しんでもらえたらと思います。

宣伝にはなりますが経営とサイエンスの2022年4月号にて酸性ストレート初級者向けに立ち位置と導入ステップ/実際のモデル施術を解説させていただきました。

そちらも合わせてご覧いただけたらと思います。

【1】酸性ストレートとは?

はじめに簡単に酸性ストレートの概要をおさらいしておきましょう。

簡単にまとめると縮毛矯正の1剤が酸性領域の縮毛矯正施術です。

なぜ酸性縮毛矯正と呼ばれず、酸性ストレートと言われているかは謎です。

従来のカラー、パーマ、縮毛矯正は髪の毛表面のキューティクルを膨潤させてその下に薬剤アプローチをとるのがスタンダードです。

しかしこの時に過剰にアルカリ性に髪の毛を振ってしまうとわかりやすく髪の毛がダメージしてしまいます。

そんなときに酸性領域での施術が役に立ちます。

アルカリを使ってキューティクルを膨潤させないのでアルカリダメージゼロで縮毛矯正、

パーマ施術を行えるので現在痛まない縮毛矯正やブリーチしててもできる縮毛矯正などと取り扱われています。

施術工程など根底の理論は従来の縮毛矯正と同じです。

アルカリ縮毛矯正の1剤によく使われる、

チオグリコール酸、システアミン、システインなどはアルカリ領域で活発化するように設計されているので、

酸性領域ではあまり還元できません。

なので酸性施術をする場合は、酸性領域でも還元できるように設計されたチオグリコール酸グリセル(GMT)、ブラクトンチオール(スピエラ)を使って1剤を組みます。

酸性還元剤はエステル系と呼ばれたりします。

【2】酸性ストレートってアルカリ縮毛矯正よりいいの?

ここまで聞くといいことしかないように感じますが、そんなことはありません。

アルカリを使わないのでアルカリダメージは確かにゼロですが、縮毛矯正をするので普通に痛みます。

個人的には酸性ストレートという名前が先行していて、わかりやすいアルカリダメージにのみフォーカスされていて、

・還元ダメージ

・熱ダメージ

・酸化不足

などのダメージ要因が軽視されているのが、酸性ストレートの失敗が多発している要因に感じます。

【3】酸性ストレートの失敗

酸性ストレートの立ち位置について明確化していくには、失敗について掘り下げた方がわかりやすいので先に酸性ストレートの失敗について考えていきます。

酸性ストレートの失敗としてあげられるのは、

・ビビり

・伸びない

このあたりでしょうか?

アルカリ縮毛矯正でも同じことが挙げられますが、少し内容が違います。

《酸性ストレート / ビビりの原因》

・過還元

・過収れん

・酸化不足

・ウェットアイロン

《酸性ストレート / 伸びない原因》

・還元不足

 

▼過還元《ビビりの原因》

GMT、スピエラは用事調整で基剤に対して適切な量を調整して施術してきます。

GMT10%配合やそこにさらに5%のSPを配合などレシピをみかけたりします。

さらに基剤に還元力がある場合は、1剤の還元剤の濃度はとても高くなりやすいのでpHの微妙な変動、アイロン時の微妙なウェットによって爆発的に還元が効いてしまい過還元という失敗はアルカリ縮毛矯正よりも確実に起こりやすいです。

▼過収れん《ビビりの原因》

毛髪はpH4.5より酸性に近づくと収れん(引き締まる)してきます。

毛髪が過剰に引き締まってしまうことを過収れんといいます。

アルカリ過膨潤の逆です。

1剤のpHを自分で調整する酸性ストレートの場合、過収れんへの注意も必要。

過膨潤より過収れんでのダメージの方が、髪の毛にとって致命的です。

▼酸化不足《ビビりの原因》

アルカリ縮毛矯正よりも酸性ストレートの方が酸化しにくいです。

少し細かい話なのでここはスルーしてもらっても構いませんが、

アルカリ縮毛矯正の場合は切断されたSS結合はイオン化されているので酸化させる時にプラスマイナスで磁石のようにSS結合を再結合できますが、

酸性施術の場合切断したSSがイオン化していないため再結合がとてもしにくいと考えられています。

YouTubeの方でも取り上げていますが、酸化不足は髪の毛にとって最悪です。

傷ませないためにアルカリを使わないのに酸化不足でシステイン酸を大量発生させてしまっては元も子もありません。

システイン酸

縮毛矯正、パーマやカラーで切れてしまったSS結合がそのままに再結合できずに酸化してしまうとシステイン酸になります。

一度システイン酸になってしまったらSS再結合ができず、システイン酸が髪の毛に多くなると髪の毛の強度が下がます。

髪の毛のダメージ指数して毛髪化学では用いられるようです。

酸性ストレートという名前が故にアルカリダメージ以外にあまり目を向けられていないように感じますがとても大切です。

その日の仕上がりはいいかもしれませんが、長い目線でみるとしっかり酸化ができていないと髪の毛はボロボロになっていきます。

 

▼ウェットアイロン《ビビりの原因》

酸性施術の場合、クセの強さや使った1剤のpHに対してドライブローでウェット具合を調節して水分量を残してアイロンワークをします。

この時に水分量を残してアイロンを180度前後で髪の毛に熱を入れるので、水分量が多すぎると水蒸気爆発で髪の毛が破壊されてビビり毛になります。

同時にウェットアイロンは毛髪内部に残った還元剤が熱の力でブーストさせて還元力を無理やりあがているのです。

水洗次第ですが髪の毛内部に多く還元剤が残っていれば過還元でもビビりにつながります。

▼還元不足《伸びない原因》

そもそも酸性で使う還元剤、GMT、スピエラは還元剤としてのパワーは弱いです。

還元剤はもともと酸性で弱いものでそのままではあまり使えないのでアルカリに設計して薬剤のパワーでSS結合を切断できるようにしたのが今一般に使われている還元剤です。

酸性で伸びない失敗を多く聞くのはそもそもGMT、スピエラは還元パワーが強い仕様ではないためです。

【4】パーマ塾的酸性ストレートの立ち位置

ここまでの失敗の要因をみていくとアルカリダメージを取らない代わりに還元パワーの弱い酸性還元剤を使って伸びない失敗を避けるために

還元剤の濃度をあげて、

ウエットアイロン、

高温のアイロンで還元力を無理やりあげる

施術方法になってしまいやすいことが失敗の可能性をあげているように私は考えています。

かといって酸性ストレートが全くだめかというとそうではありません。

油分との相性がいいのか酸性ストレートならではのアルカリ膨潤しないツルッとした質感油分との相性がいいのかは通常の縮毛矯正では出せません。

ここでどのように酸性ストレートに向き合っていくか、この記事の本題に入ります。

まずパーマ塾的には健康毛に対して無理して酸性ストレートは行わない。

前回の酸性ストレートの記事でも解説しましたが、私が普段のサロンワークをしていて健康毛に対して酸性ストレートを施術することはほとんどありません。

ある程度のクセを伸ばすのは、アルカリだろうが酸性だろうが結局同じくらいのSS結合を切断しないとクセは伸びません。

アルカリ縮毛矯正と酸性ストレートの還元ウェイトをわかりやすくするためのイメージ図を作成しました。

 

上記でもふれましたが、還元剤としてのパワーの弱いGMT、スピエラを使って健康毛に近い割と強いクセに対してアプローチをかける時に必要還元まで1剤パワーよりもウェットアイロンなどで還元を上乗せしないと還元しきれません。

もしくは1剤のGMT、スピエラ濃度をあげてpHをあげるという選択肢がありますが、ここまでるなら結局アルカリ縮毛矯正で良くない?と思っています。

伸ばすために適切ではないpHで還元剤を山盛りに入れるリスクはかなり高いです。

なら適切なpHに設定し少量の還元剤で最大限のパフォーマンスを出すのが安全だと現在は考えています。

そしたら実際にはどのくらいのpH、濃度で酸性ストレート向き合うのが安全なのか?

消去法で危険なエリアから避けて使用するのが酸性ストレートを比較的安全に再現しやすいです。

 

上記で解説した失敗をわかりやすく可視化するために簡単なグラフにしました。

 

イメージしやすくするためにエステル系の濃度、pHを表記していますが、実際のダメージレベルや太毛/細毛、使うエステル剤溶剤の還元剤濃度によっての大幅なブレはあるので悪しからず。

※あくまでもイメージです。

伸びない(還元不足)原因を除けば酸性ストレートで気をつけるべきことは、

 

  • 過還元
  • 過収れん
  • 酸化不足

過還元

 

イメージですがエステル剤濃度は15%以上入れている時は過還元に注意が必要です。

かつ15%以下でもpHが中性に近いほど還元力は上がっていくので、10%以上濃度を使っている時は注意が必要です。

酸性ストレートでの毛先や表面のチリつきは過還元のことが多いです。

過収れん

毛髪のダメージレベルによりますがpHが4.5を下回ると髪の毛はかなり引き締まってくるので過収れんにも注意です。

アルカリ膨潤でのダメージより過収れんの方がダメージとしてやばいです。

少し前の酸熱トリートメントの失敗も過収れんも一つの要因だと思います。

酸化不足

酸化不足は還元剤濃度が高くてpHも低い方が起こりやすいのでグラデーションをかけています。

こんなイメージです。

酸性ストレートはアルカリ縮毛矯正より酸化不足に注意が必要です。

pHや還元剤の濃度によって放置時間

酸性ストレート失敗リスクまとめ

図が汚くなりますが、まとめると

図の左上部分が一番重複が濃くなるので施術する際リスクが高いです。

大体で

  • pH4以下
  • 還元剤濃度15%以上

 

 

上手くやればこの範囲でも普通に施術はできますが、酸性ストレートの触りたてでこの範囲の1剤で施術するのはリスクが高すぎるので避けておいた方がいいと思います。

上記の条件から右下の範囲での施術であれば、そこまでリスクを取らなくても酸性施術が行えると考えています。

  • pH5〜6
  • 還元剤濃度〜8%

の範囲で1剤の強弱を調節するのが失敗が少ないのではないかと思います。

ここに慣れてきたらはじめてこの外の領域での酸性施術に取り組んでいけばいいのではないでしょうか?

【5】酸性ストレートを安全に施術するには?

ここまでで酸性ストレートの見えざるリスクを説明してきましたが、それを理解した上で酸性ストレートをどのような立ち位置で使っていくか。

・無駄に酸性ストレートでリスクを取らない

・GMT、スピエラでも伸びるクセに使っていく(pH5〜6/濃度〜8%範囲)

アルカリ縮毛矯正での1剤ダメージを上手くコントロールできていればアルカリダメージを最小限にしつつ、酸化不足、ウェットアイロンのリスクをスルーできるので、個人的にはアルカリ縮毛矯正でも酸性ストレートでも施術ができる場合は酸性ストレートを選びません。

極弱のクセを髪質改善的なメニューとして、伸ばす場合や

縮毛矯正既ストレート部の質感を向上させたい場合は、酸性ストレートを選択しますが

その場合はpH5還元剤濃度5%くらいで施術できるので、酸性ストレートの質感を出しながら少ないリスクで施術します。

これが現状考える酸性ストレートの立ち位置です。

アルカリ縮毛矯正と何度も書いていますが、最近のアルカリ縮毛矯正は微アルカリ〜中性縮毛矯正が主流なので、クセが少しでも強い場合は酸性より微アルカリが安定します。

ほとんどの技術にいい部分もあれば、悪い部分もあるので適切なパターンで適切な施術を繰り出せるように美容師側が準備できているといいですね。

 

冒頭でも書きましたが、現在私はこう考えているという記事になるのでいろんな方の意見を聞いて最終的には自分でジャッジしてサロンワークに落とし込んでください。

参考になったという方は、インスタ、ツイッターでシェアしていただけると嬉しいです!

お客様向けへの酸性ストレートに記事も執筆しておりますのでご興味がある方はご覧ください。

 

»【予約前に確認!】酸性ストレートで本当に大丈夫?髪質改善?縮毛矯正?メリット/デメリットを現役の都内美容師が徹底解説します!

 

YouTubeに酸性の薬剤の使い方や使っている薬剤への質問がたくさん届くので、

  • 導入メニュー化の考え方
  • 使用薬剤
  • レシピ
  • 実際の施術
  • 酸性の施術の注意点

かなり細かくまとめました。

興味のある方はこちら、ご覧ください。

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